尖閣問題で日本政府の意思決定に疑問あり

執筆者:野嶋剛2010年9月28日

この一週間ほど中国に滞在していましたが、船長の勾留延長が決まり、中国の日本への「報復」がすごい勢いで始まって、船長が釈放されました。船長はVサインを送還の機上で掲げ、一種の英雄として連日中国メディアに登場していました。

中国の過剰な強硬姿勢を批判するのはたやすいのですが、日本人として私が指摘しておきたいのは、今回、我が日本政府の意思決定に大きな問題があったということです。

「政治的判断」を求めた中国に対し、「国内法で粛々」という表現が今回、日本の政治家の口から様々な場所で語られました。ただし途中まで。船長の釈放は紛れもない「政治的判断」です。つまり「粛々」は途中でポキッと折れたわけです。

中国は、ケンカの相手としては、やっかいで、怖い相手です。その中国とケンカをするにはそれなりの覚悟と準備が必要で、政府内の意思統一も、落としどころの想定も、ちゃんと固めておくべきでしたが、それがほとんどなかったことが、その後の各メディアの検証報道で明らかになりつつあります。

もともと尖閣問題では過去の例にもありますように、ナショナリズムを盛り上げてしまう「人間」を捕まえることは避ける、という処方箋を日本は持っていました。今回、事例が悪質だったので、それを曲げて逮捕に踏み切った。そこまではいいでしょう。

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