曲がり角に立つ急進左派政権(1)(エクアドル)

執筆者:遅野井茂雄2010年10月4日

 9月30日エクアドルで公務員法制定に反対した警官がストライキを行い、説得に当たろうとしたコレア大統領が一時監禁状態に置かれ、軍により救出される事態が発生した。騒乱の中で略奪が発生、政府は全土に一週間の非常事態宣言を発令し軍の出動を命じた(報道によれば全土で8名が死亡)。

 大統領は警官の反乱を「クーデター未遂」と非難したが、賞与カットなどを盛り込む公務員法への不満に起因する抗議活動で、自ら警察本部に乗り込んで挑発し催涙弾を被弾するなど、奇抜な行動で知られる大統領の軽率な行為が事件の性格を変えたという側面もある。軍首脳部も大統領支持をいち早く表明したこと、後継指導者の不在という点からみても、政権交替を直接狙ったものとは考えにくい。中南米諸国や米国政府もこぞって政権支持を表明、事態は国家警察のマルチネス司令官の辞任で幕引きとなった。

 だが、反乱が全国規模で発生したこと、一部軍も同調し主要空港が閉鎖されたこと、大統領支持を表明した軍首脳部も公務員法の取り扱いを含め話し合いによる収拾を求めたことなどを考えても、今回の事件の根は深いとみるべきだろう。コレア政権については、「矛盾多い市民革命の旗手」として先に紹介したが、新憲法の下で議会の解散を仄めかすなど、その強引な政治運営に批判が渦巻いてきた。コレア大統領が、05年の市民の抗議活動で失脚したグティエレス元大統領を事件の黒幕と非難したことに対し、大統領選の選挙監視でブラジルに滞在した元大統領は、反乱は非難しながらも、コレア政権を「権力を乱用する権威主義」と応酬している。

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