曲がり角に立つ急進左派政権(1)(エクアドル)

執筆者:遅野井茂雄 2010年10月4日
タグ: 大統領選
エリア: 中南米

 9月30日エクアドルで公務員法制定に反対した警官がストライキを行い、説得に当たろうとしたコレア大統領が一時監禁状態に置かれ、軍により救出される事態が発生した。騒乱の中で略奪が発生、政府は全土に一週間の非常事態宣言を発令し軍の出動を命じた(報道によれば全土で8名が死亡)。

 大統領は警官の反乱を「クーデター未遂」と非難したが、賞与カットなどを盛り込む公務員法への不満に起因する抗議活動で、自ら警察本部に乗り込んで挑発し催涙弾を被弾するなど、奇抜な行動で知られる大統領の軽率な行為が事件の性格を変えたという側面もある。軍首脳部も大統領支持をいち早く表明したこと、後継指導者の不在という点からみても、政権交替を直接狙ったものとは考えにくい。中南米諸国や米国政府もこぞって政権支持を表明、事態は国家警察のマルチネス司令官の辞任で幕引きとなった。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
遅野井茂雄(おそのいしげお) 筑波大学名誉教授。1952年松本市生れ。東京外国語大学卒。筑波大学大学院修士課程修了後、アジア経済研究所入所。ペルー問題研究所客員研究員、在ペルー日本国大使館1等書記官、アジア経済研究所主任調査研究員、南山大学教授を経て、2003年より筑波大学大学院教授、人文社会系長、2018年4月より現職。専門はラテンアメリカ政治・国際関係。主著に『試練のフジモリ大統領―現代ペルー危機をどう捉えるか』(日本放送出版協会、共著)、『現代ペルーとフジモリ政権 (アジアを見る眼)』(アジア経済研究所)、『ラテンアメリカ世界を生きる』(新評論、共著)、『21世紀ラテンアメリカの左派政権:虚像と実像』(アジア経済研究所、編著)、『現代アンデス諸国の政治変動』(明石書店、共著)など。
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