劉暁波と高行健とダライ・ラマ

執筆者:野嶋剛2010年10月11日

今回、ノーベル平和賞を受賞した劉暁波については、1989年に天安門広場にいたときの姿を思い起こします。劉暁波は北京師範大学の講師でした。ウアルカイシも柴玲も北京師範大学で、直接授業を受けたことはなかったようですが、2人とも劉暁波の影響を受けたかも知れません。以前台北でウアルカイシにインタビューしたときも、劉暁波を称賛していました。

過去に中国関係でのノーベル賞と言えば、2000年の文学賞の作家・高行健と、1989年に平和賞を受賞したダライ・ラマ。劉暁波を含めた3人とも、中国政府にとっては「好ましくない人物」です。今回、中国政府のコメントがノーベル賞委員会やノルウェー政府に対してかなり激しいものとなっているのも、「またか」という苦々しい思いがあるからに違いありません。

チベット人など一部を除いた大半の中国人にとって、ダライ・ラマは国家分裂を企てる悪い人というイメージがそこそこ定着しており、実際のところ、中国政府の立場と民衆の考えにそこまで大きな違いはありません。高行健も、作家として有名になったのは天安門事件後。事件のときはヨーロッパにいてその後も中国に戻っていないため、中国人にとっては「だれ?」というイメージのようです。

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