世界は中国をどう見ているか

執筆者:会田弘継2010年10月22日

 尖閣諸島沖での漁船衝突事件で中国のごり押しに腰砕けになった政府に落胆させられたと思ったら、中国の獄中の人権活動家、劉暁波氏へのノーベル平和賞授与が決まって、溜飲を下げた――。それにしても、この事態を世界はいったいどう見ていたのだろう。大方の日本人が関心を持つところだ。
 日本のハイテク製品に欠かせないレアアースの輸出まで止めて日本を屈服させた中国の対決的姿勢は、近隣諸国との協調を重視してきた「平和的台頭」路線からの大転換だ。米誌「ニューズウィーク」はそう見た。

アジアに広がる「中国離れ」

 中国が領有権を強く主張しているのは、尖閣だけでない。インドに対しては、北東部アルナチャルプラデシュ州の領有権問題を蒸し返しだした。南沙・西沙諸島の領有権を東南アジア諸国と争う南シナ海一帯には「核心的利益」があると言い、チベット・台湾と同じく、一切の妥協を許さない扱いを宣言。メコン川上流に新しいダムを次々造り、下流諸国を無視して勝手に水流を変える。少し横暴すぎないか。
 革命世代ではない胡錦濤国家主席と習近平副主席には軍をコントロールする力量がない。そのうえ、胡から習への権力移行期に入ったことで政権のたがが緩み、軍部がタカ派路線を突っ走っている。それが強硬姿勢の背景だ。「ニューズウィーク」は英専門家のそうした見方を紹介する。
 しかし、損をしているのは中国だ。アメリカの勝手し放題を中国の台頭を利用して抑えようとしていたアジア各国は、いまや密かにアメリカと手を組みだした。ベトナムはアメリカとの戦略対話に入った。10年もたてば東南アジアでシンガポールと並ぶ親米国家になるだろう。ベトナムは日本とも安保対話に入り、日本の投資は中国よりもインドに向かい始めた。同誌はそんな胎動を紹介する。 【Newsweek, Oct. 4, A Beijing Backlash】

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