オバマ大統領「中国抜きアジア歴訪」の評価

執筆者:会田弘継2010年11月19日

 きびすを接して開かれたソウルでの20カ国・地域(G20)首脳会議(11月11、12日)と、ヨコハマでのアジア・太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議(13、14日)。そこへ中間選挙で歴史的敗北を喫したばかりのオバマ米大統領が、インドとインドネシアというアジアの2大国を歴訪してから参加した。この1カ月の国際ニュースのハイライトは、米大統領の10日間にわたるアジア歴訪だった。
 この歴訪の訪問先に中国が入っていないという点に、隠された重要な意味があった。その点を探る前に、歴訪の表面的成果が各国メディアでどう論じられたか、整理しておこう。APECでの日中首脳会談や、環太平洋パートナーシップ(TPP)論議に注目した日本のメディアとは違う視点がある。

経済面での成果に厳しい評価

 米英メディアのオバマ大統領に対する目は厳しかった。米国の要求にもかかわらず人民元切り上げを渋る中国。それに対し、経常収支の過度な黒字・赤字がある国は、2015年までに国内総生産(GDP)比で4%以内におさめるという「数値目標」を設定しようという提案を持ち出した米国。提案のターゲットはあきらかに中国だった。だが、中国と、その道連れにされたドイツなどの反対にあい、来年前半に行なわれるG20財務相・中央銀行総裁会議での議論に先送りされた。さらに、李明博・韓国大統領との間で最終合意が期待された米韓自由貿易協定(FTA)も、先送りとなった。
 この事態を、12日付の米主要紙「ニューヨーク・タイムズ」は「世界の檜舞台でオバマの経済観が拒否された」というセンセーショナルな見出しで報じた。【The New York Times, Nov.12, Obama’s Economic View Is Rejected on World Stage】米韓FTA先送りでは「歴訪から生み出す予定だった最も具体的な成果をつかみ損ねた」と指摘。経常収支の黒字・赤字削減の「数値目標」については、そんな話し合いをする前に、会議直前に米連邦準備制度理事会(FRB)が決定した追加金融緩和策が「ドル安狙い」で、「通貨戦争」を煽っていると各国から批判を浴び、その防戦に大わらわだったと伝えている。
 もう1つの米主要紙「ワシントン・ポスト」も1面で米韓FTAが先送りされたことを伝え、紙面の脇見出しは「中間選挙敗北のオバマ、影響力弱める」と指摘した。G20でソウルに来る前のインド、インドネシア訪問はそれなりの成果を生んだが、「政治的に弱体化した(オバマ)大統領は、米経済に広範な影響を及ぼしうる(米韓)合意を持ち帰ることはできなかった」と手厳しい。 【The Washington Post, Nov. 12, Obama, weakened after midterms, reveals limited leverage in failed S. Korea deal】
 英紙「フィナンシャル・タイムズ」も、G20で「数値目標」の米提案ははねつけられたと1面トップ大見出しを掲げ、社説でも「通貨戦争とマクロ経済不均衡という首脳会議の最もホットな議題で、何も達成できなかった」と断じた。【The Financial Times, Nov. 13, G20 show how not to run the world】

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