平野さんが11月18日に「アフリカの部屋」へ投稿した「尖閣諸島漁船衝突ビデオの流出事件について、アフリカ国家論から思う」に対して、読者の方々からいくつかのコメントが寄せられ、私は「これは興味深い議論だなあ」と思いながら読んでいました。

 投稿からほぼ1カ月が経過し、海上保安庁の尖閣ビデオ流出を巡る議論は沈静化の様相ですが、私は西アフリカのコートジボワールで続いている「大統領が2人」という異常事態を見ながら、「国家公務員の義務・責務とは何か」という問題をますます深く考えています。

 コートジボワールで進行中の異常事態の現状を知るには、前回の平野さんの投稿文で紹介された岡村善文・駐コートジボワール日本大使のブログが役立ちます。現地の生々しい様子が伝えられている岡村大使のブログを読んだ私は「もし、自分がコートジボワールの国家公務員だったとしたら、どのような立場を選択し、何に恭順の意を示し、どちらを向いて仕事し、何を義務とするのか」と考え込んでしまいました。

 なにせ「大統領」が2人いるのです。

 選管に勝利宣告された野党候補のワタラ氏は、国際社会から「真の大統領」として認知され、組閣を終えています。一方、敗北を認めず大統領官邸に居座り続けているバグボ氏は国際的には四面楚歌ですが、選挙では約45%得票しました。つまり、国民の10人に4人くらいの支持は得ています。負けたと言っても無視できない勢力です。そして、こちらもやはり「組閣」を終えています。2人の「大統領」が存在し、それぞれが「組閣」を終えている状態。つまり、コートジボワールには2つの「政府」があるのです。逆説的に言うと、全土を実効支配している政府が存在していません。

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