「液状化」するドイツ政界

執筆者:2000年1月号

コール前首相のヤミ献金疑惑、シュレーダー首相の弱体化で「ワイマール末期状態」に

[ベルリン発]ドイツ政界が迷走を始めた。前政権の金権腐敗ぶりが次々に暴露され、検察当局はついにコール前首相の本格捜査に着手。政治への信頼が音を立てて崩れる一方で、低迷状態にあったシュレーダー政権は「漁夫の利」を得た格好になった。

 だが、同政権は「新中道路線」の形骸化、地方選の連敗などで、政策実現機能を失い弱体化しているのが実状だ。国民の間には閉塞感が拡がり、左右の旧勢力が伸びるなど「政治の液状化」が進んでいる。このまま政治空白が続けば、ドイツは統合欧州を脅かす発火点にさえなりかねない。

統一宰相から容疑者に

 一月三日、ボン地方検察庁は背任容疑でコール前首相の捜査を開始。前政権の与党、キリスト教民主同盟(CDU)へのヤミ献金疑惑は、前首相の刑事責任追及という未曾有の事件に発展した。当初、疑惑は会計責任者だったキープ元ニーダーザクセン州蔵相の脱税事件で終わると見られていた。しかし、党関係者が相次いで資金処理の不透明さを指摘、証言したことで前首相は追い詰められた。前首相はしきりにテレビに登場、懸命に弁解を繰り返したが、捜査開始後は沈黙、マスコミの前から姿を消した。

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