米国が開発を目指す驚異の超小型スパイ装置
2000年2月号
「涙のしずくほどのサイズで、最速のスーパーコンピューターのパワーを持った分子コンピューター」
クリントン米大統領が一月二十七日、任期最後の一般教書演説で、そんな驚異的なコンピューターの開発のため、政府研究開発費を増額する、と明らかにしたので驚いた。
政府支出のハイテク研究開発を正当化するのも大統領の目的であり、割り引いて受けとめる必要がある。だが、その野心的なコンセプトは注目に値する。
奇しくもほぼ同時となった小渕恵三首相の施政方針演説が、借り物の空疎な言葉で満ちていたのとは対照的だった。日本の新聞が「分子コンピューター」のことを一行も伝えなかったのもやや気になった。
大統領は演説で、研究開発に取り組む技術として、話すのと同じ速度で同時通訳できる翻訳機械、鋼鉄の十倍もの強度を持つ新素材に加えて、分子コンピューターを挙げた。
分子コンピューターは、『現代用語の基礎知識』にも『知恵蔵』や『イミダス』にも掲載されていない。日本の大手メーカーも「日本ではどこも研究開発していないだろう」と話している。
専門家の話だと、分子コンピューターは「理論的には可能」とされている。装置のサイズの超小型化を図ることができて、計算速度が極めて速く、しかも消費電力が少なくて済むという大きな利点がある。
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