先月も書いたが、欧米をはじめ世界中の多くの地域では、今年は新千年紀の最初の年であり、二十一世紀最初の年と認識している。スイスの山中、ダボスで開催された恒例の世界経済フォーラムの年次総会でも、ほとんどの論者は、「新世紀、新千年紀の開始」ということを枕詞にして議論を始めていた。

 その新世紀の最初の月は、幸いにも金融危機もなく、大戦争もなかった。したがって、世界の論調はやや拡散したものとなった。その中で、関心をあつめた事項を三つあげてみれば、それは、AOL(アメリカ・オン・ライン)によるタイム・ワーナーの吸収合併であり、前述したダボス会議とそれに反発するデモであり、そして、オーストリアにおける連立政権の誕生であった。この三つは、全く関連がない事態のようにも見えるが、筆者には、いかにも現代の国際関係の特徴を表しているように見える。それはつまり、現代国際関係における「情報」や「シンボル」といった要素の重要性であり、また、旧来の国家像に対してなされる多様な主体によるチャレンジである。

「ナローキャスティング」の時代

 AOLとタイム・ワーナーの合併はその買収規模が史上最高であったことも注目されたが、やはり、二十一世紀の情報産業の世界の幕開けを物語るという意味で最も注目された。『エコノミスト』誌社説は、インテルのアンディ・グローブ会長が指摘した「変曲点」(inflection point)という言葉を紹介している。つまり「競争条件を根本的に変化させ、すべてがそれ以前とは異なるようにさせてしまう可能性のある出来事の一つ」だというのである(“The Big Leap,”一月十五日号)。

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