二年前の一九九八年三月二十四日、ノルウェー国防最高司令部が新聞発表を行なった。
「バルデ(ノルウェー北端)にグローブス2レーダーを設置する。人工衛星と“宇宙のゴミ”を監視するのが任務。これによって、ノルウェー情報当局の能力を強化する」

 オスロの有力紙アフテンポステンはそんな簡単な内容を米航空宇宙局(NASA)提供の“宇宙ゴミ”イラストとともに掲載した。

 世間はあまり注目しなかったが、ノルウェー第二の都市ベルゲンのティデンデ紙の科学担当、インゲ・セレボーグ記者は気になり、フォロー取材に乗り出した。

 まず、NASAジョンソン宇宙センター(ヒューストン)の宇宙ゴミ室にコンタクトして、グローブス2はNASAとは無関係なことが判明した。宇宙ゴミは隠れ蓑で、グローブス2は、ノルウェー軍と米空軍宇宙司令部の協力プロジェクトだったのだ。

 バルデは北緯七〇度のすぐ北。北極海に面し、ロシア国境からわずか約六十五キロ。ここには、一九六〇年代から、旧ソ連海軍潜水艦を追跡し、地上発射ミサイル実験を監視するグローブス・レーダー施設が置かれてきた。

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