米国株の調整を機にメッキは剥げ落ちる

執筆者:小暮史章2000年3月号

バイオ株の高騰、原油市場への資金流入――。マネー市場と政治の駆け引きが続いている。郵貯マネーの大量流出が間近に控える中で、米国株高の映し絵に踊る日本のリスクは何か。〈あるファンドマネージャーは、ブラジル沖に島を買った。自らの国を作り、新規株式公開をするためだ。国の名前は、上昇、成長を意味する「GOING」。企業が利益を上げれば、税金を取る代わりに、報奨金を与える。 もちろん、そんな国は存在しない。が、もっともらしいリポートを流しておけば、投資家に怪しまれることはない。新興成長市場に投資しているファンドマネージャーが、実際にペルーやパキスタンを訪ねたことがあるのかい? もし本当に訪ねたいという人が現れたら、空港でテロが発生したと言えばいい。二の足を踏むから。 先進国で溢れた資金は、どんどん「GOING」国に流れ込む。ご多分に漏れずバブルはいずれはじけるに違いない。そうなったら、反乱が起き、政府が転覆されたことにするのさ。大統領はヘリで夕闇に消えて行く。すべては過ぎ行き(GOING)、そして過ぎ去る(GONE)――〉 この文章の作者は、米投資銀行モルガン・スタンレー・ディーン・ウィッターの投資戦略担当者であるパートン・ビックス氏である。昨今の情報技術(IT)ブームを皮肉った一文と思われようが、実は九四年初めに新興成長市場ブームの危うさを指摘したものだ。

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