逆効果だった中国の「台湾白書」

執筆者:田中明彦2000年4月号

 注目された台湾の総統選挙は、事前に中国による激しい“批判”が繰り広げられたにもかかわらず、独立志向が強い民進党の陳水扁候補が当選した。ただ、中国の陳水扁当選に対する反応は、今のところ静観に終始しており、危機の再来は回避されたようだ。

 一方、ロシア大統領選挙は、大方の予想どおりプーチン大統領代行が当選。

 また、アメリカでは、大統領選挙予備選の山場ともいうべきスーパー・チューズデイで、民主党、共和党ともに本命候補だったゴア、ブッシュの二人が勝利した。国内的には積極的な政策をとる余地のあまりないクリントン大統領は、アメリカ大統領として二十二年ぶりに南アジア訪問を行なうなど、外交活動を積極化させたが、目立った成果はあがらなかった。

 このように三月にはいくつも出来事があったが、特に危機的な展開はなく、論壇を独占するようなテーマは見あたらなかった。

見えてこない中国の意図

 台湾の総統選挙については前号でもとりあげたが、猛烈な抗議を続けた中国の意図をめぐっては二つの異なる見方があり、それが総統選挙まで継続した。ホワイトハウスの元高官で、パシフィック・フォーラム理事長のジェームズ・ケリーは、台湾に関する白書について、「全体としてみると、この政策文書の重点は、台湾に交渉を呼びかけるものというより、脅迫に傾き、武力行使の可能性を高めるものだ」と結論づけている(“What Is Beijing's‘Policy Paper’Trying to Convey?”『インターナショナル・ヘラルド・トリビューン(IHT)』、三月十三日)。

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