「経営者は孤独なもんでっせ。逃げられない、オーナーはね。若い連中は分かってないかもしれない。みんな、お金の有限性というのが分からない。お金儲けたら、何でもできる、と思ってるようだけど、そうでもないですよ」「お金で人の心は買えないけどね、人の心をつかんだら、お金は儲かるんです」 若者向けの人気雑誌「ブルータス」の五月十五日号で、大川功CSK会長がそう語っている。どきっとさせられる、生々しいインタビューである。虫のいいシナリオ 大川功はベンチャーの世界では立志伝中の人物である。CSKの創業者にしてオーナー。一方、関連会社を含め四〇%近い株式を保有するセガ・エンタープライゼスの会長として、ソニーの「プレイステーション」の対抗機種である「ドリームキャスト」戦略の最前線に立っている。 その大川がいま、人生で何度目かの、そしておそらくは最後にして最大の危機に直面している。二月下旬、いわゆる「ネットバブル」が崩壊した。セガは経営再建と資金繰りのために一千億円強の巨額の第三者割り当て増資を実施、オーナーである大川功と、親会社のCSKがそれぞれ五百億円ずつ引き受けるという計画を打ち出す。そしてCSKは、やはり当時の株価で一千億円近い公募増資を計画する。

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