FORESIGHITが選ぶ株式重視型企業100

執筆者:船木春仁2000年5月号

 企業の真の統治者は誰か――。「失われた10年」に進んだ日本型経営の構造改革論議を通じ、株主を重視する原点回帰が始まっている。

 モノづくりの復権が始まっている。「それなくして製品はありえない」というキーデバイスで圧倒的な優位性を確保し、その存在をたしかなものにする。今年で三回目となる企業ランキングの結果を見て真っ先に感じたのがこのことだった。

「モノづくりの復権」と書いて「製造業の復権」とは書かなかったのには訳がある。ランキングの上位に顔を出している企業群には、部品から本体まですべてを自社開発・生産するような垂直統合型の事業モデルを持つのではなく、技術や製品を核にして企業系列の枠を超えて協働化(コラボレーション)の道を探る「水平統合型」の企業が圧倒的に多いからである。従来の製造業のイメージとは明らかに異なる。

 その技術は世界の他の企業の追随を許さない圧倒的なものであり、私たちの想像以上に、これらの企業群は現代産業においては「なくてはならない企業」として君臨している。

 九〇年代の情報通信技術を中心とするアメリカ産業の隆盛には、その技術もさることながら、「ベスト・エフォート」という考え方に象徴されるような強力な技術戦略があった。つまり、多少、品質が劣っていてもコスト競争で競合者を駆逐したり、著作権を楯に立場を維持するという戦略である。これに対して日本産業は、そのような戦略を持てないまま、ずるずると後塵を拝してきた。九〇年代の日本産業に対する悲観論は、まさに絶望的な思いを私たちに与え続けていた。

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