伝統技術を生かして世界的CD-Rメーカーに転身

 セーラー万年筆が、筆記具メーカーから世界的CD-Rメーカーへと転身を遂げたことを御存知だろうか。同社の製造ラインは世界最速といわれ、知る人ぞ知る存在だ。

 だが、ここに至る道のりは決して順風満帆ではなかった。中性インクペンの開発と海外市場の開拓に出遅れた同社は、九六年十二月期、九七年十二月期と二年連続赤字決算に陥り、早期退職者の募集を開始。この三年間で二百三十名もの人員削減を行ない、総人員は三百七十八名まで減少した。九八年十二月期には定年後の再雇用制度も廃止。採算の合わない百貨店販路から撤退するなど、創業事業である筆記具事業において果断にリストラを実行してきた。

 CD-R製造は筆記具事業と一見全く畑違いのようだが、その実、今まで培われた技術が大いに生きている。同社のロボット事業開発の歴史は古く、万年筆のカートリッジ選別機を社内製作した六五年に始まる。七九年には万年筆のペン先に金メッキを塗布する技術を開発。この技術は後に、CDの表面処理機の開発に応用されてゆく。

 CD-Rの製造ラインは、成形、色素、塗布、色素膜圧検査、品質管理用ナンバリング、保護膜塗布などの各装置から構成されるが、各工程で機器メーカーが異なり、歩留まりや生産性をライン全体で向上させるのは困難だった。同社では、この製造工程を、万年筆事業で経験したロボット製造技術、保護膜塗布技術などを生かして一貫生産ラインとして供給。一工程あたり他社が三秒要するのを一・八秒で仕上げるなど圧倒的効率性を実現した。

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