「フジモリさんは国際世論のことなど全く分かっていないんだ。モンテシノスが陰で何をやっているのか知らないけどね」

 日ごろは温厚な日本政府高宮が、ペルー大統領選決選投票で日系二世のアルベルト・フジモリ氏が勝利したと聞いて、苦虫を噛みつぶしたような表情でそう言った。

 モンテシノスとは、この欄でも過去三度触れたペルー国家情報局(SIN)の顧問ブラディミロ・モンテシノス氏のことである。

 モンテシノス氏は、一九九〇年、彗星のように登場したフジモリ大統領とともに政権を裏から支えてきた、情報機関の事実上のトップだ。

 日本はペルーに中南米で最大の政府開発援助(ODA)を供与しているが、日本では、フジモリ政権の陰の部分はあまり伝えられてこなかった。日本の政府もメディアも、日系二世の大統領ということで追及が甘かったことは否定できない。

「いや、一九九二年四月の“自主クーデター”の時には、日本政府は『ODAを引き揚げるぞ』と強く警告したんですよ」と、この日本政府高官は言う。

 あの時、フジモリ大統領は突然、憲法を停止して国会を閉鎖、汚職判事を大量解雇し、非常国家再建政府を樹立した。大統領が自らクーデターを起こすという前代未聞の異常な事態で、「自主クーデター」と呼ばれた。

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