昨年秋の臨時国会から、官僚が国会答弁を行なう政府委員制度が廃止され、政務次官の役割が増大した。故小渕恵三前首相は政務次官に政策通を数多く起用したが、この時、三十代の若さで大蔵政務次官に抜擢されたのが、林芳正参議院議員である。一年生議員ながら宮沢喜一蔵相直々の指名を受けた林氏は、大蔵省OBである蔵相と大野功統総括政務次官に伍して、国会答弁や国際会議といった任務をこなしている。「財政投融資の改革や預金保険制度など、党で取り組んできた制度改革に関する法案の答弁に立つというのも、なかなかオツなものですね」とは、八カ月間務めあげての氏の感想だ。 一九六一年生まれの林氏は、かつて宮沢内閣で蔵相を務めた林義郎衆議院議員の長男。義郎氏の曾祖父と父も揃って議員を務めており、芳正氏は四代目議員ということになる。「いろいろ言われることにはもう慣れましたが、二世というだけでレッテルを貼るのは何とかならないかと思う。もう少し個々人の仕事をきちんとみてほしいですね」 そんな林氏は、子供の頃から政治家を「かっこよくない」と感じ、別の仕事に就きたいと思っていたそうだ。父と同じ東京大学法学部を卒業するも、通産省に進んだ父のように官吏の道は選ばず、三井物産に入社した。「『業法』があると法に定められた通りに仕事をしなくてはいけない。そんな法律のない業界に行きたかったんです」というほど民間志向が強かった背景には、父と同じ道を歩むことへの反発もあったという。けれども、「出馬なんて全然考えていなくて、一生いようと思って入った」商社での経験が、結果的には氏を政治の道に進ませる契機となった。

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