「危機管理がスローガンになったり、過去のエピソードとして語られている間は、いざというときに役立つ方法論に結びつくことはないだろう。危機管理とは、決して格好よくいくものではなく、手痛い犠牲と苦難の経験のなかから手づかみで教訓を積み重ねていくものだ」(大森義夫『「危機管理途上国」日本』PHP研究所刊 一五〇〇円) JCOの臨界事故、官庁ホームページへのハッカー侵入、故小渕前首相緊急入院時の疑惑の首相臨時代理就任劇。相次ぐ事件の報道の際、必ずといっていいほど指摘されるのが、日本の「危機管理」体制の不備である。本書は、漠然と語られることの多いこの「危機管理」について考える上で、格好な入門書といっていい。 著者は、内閣情報調査室長として、宮沢内閣から橋本内閣まで五人の総理に仕えてきた「情報のプロ」。そのキャリアの最中には、オウム真理教に関連するさまざまな事件や阪神大震災も経験している。 本書では、著者自らが直接携わった、在ペルー日本大使公邸占拠事件も含め、過去の事件や災害の際の対応例を教材に、日本の危機管理体制におけるさまざまな問題点が解き明かされていく。フジモリ大統領について、そのリーダー研究が不足していたと、自らの“失敗”についても正直に言及している。改善すべき点として、法律の整備に加えて、情報の共有化システム構築や国民への情報公開の必要を説いている点は、「情報のプロ」ならではと言えよう。

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