存在理由を見失い漂流するASEAN

執筆者:2000年7月号

地域連合である「意味」が問い直されている――[ジャカルタ発]ASEAN(東南アジア諸国連合)が揺らいでいる。昨年四月、カンボジアが加盟してASEAN10が実現したことにより、「入るべき国はすべて加盟した」(外交筋)。つまり一大地域連合体の形を、表面上は整えたと言えるだろう。 しかし、先進国とも言えるシンガポールから超発展途上国のラオス、さらには軍事政権のミャンマーを抱えるとあっては政治的、経済的に歩調を合わせることは難しい。特に経済面ではIT(情報技術)革命のただ中で、デジタル・デバイドとも新・南北問題とも言える域内格差を生み出しつつある。加盟各国が独自の歩みを強める一方、ASEANプラス3(ASEANプラス中日韓)という新たな枠組みも誕生。ARF(ASEAN地域フォーラム)への北朝鮮の参加も決まり、経済・安全保障の協力関係が東アジア全体へと広がってゆく中で、ASEAN自体の存在理由は希薄になっている。広がる“外縁”と乱れる歩調「インドネシアはASEANを軽視しているわけではないが……」。同国の元外交官はこう言いながらも、現在の外交政策はASEANを重視してきた従来の外交から明らかに一線を画しつつあることを認める。

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