旧ソ連国家保安委員会(KGB)出身のプーチン大統領の下でロシア対外情報局は復権を図ろうとしているが、その内部で欧米派とアジア・中東派の静かな確執が生じているという。 プーチン大統領はことし五月、対外情報局の長官を、ビチェスラフ・トゥルブニコフ氏からセルゲイ・レベジェフ氏に交代させた。トゥルブニコフ氏は、中東や日本に強いプリマコフ元長官の側近でインドの専門家。新長官のレベジェフ氏は、プーチン大統領と同様、一九八〇年代にドイツで諜報活動に従事した経歴の持ち主で、対外情報局の米国代表から抜擢された。 このトップ交代で、主導権の喪失を恐れるプリマコフ=トゥルブニコフ派と、実権を確立しようとするプーチン=レベジェフ派が相互に牽制し合う図式が生まれたというのだ。 欧米派台頭の背景には、ハイテク技術を狙った経済諜報を重視する潮流もある。だが、トゥルブニコフ氏は、対外情報局は去ったものの第一外務次官と独立国家共同体担当の大統領特使を兼任する重要ポストにあって影響力を維持しており、KGBの流れをくむ諜報エリートの世界に新たな緊張が生じている。

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