武力衝突の恐れもある中東情勢

執筆者:村上大介2000年8月号

バラク、アラファト双方を襲う「交渉決裂」の余波[カイロ発]「キャンプデービッドで合意に署名していれば、それはパレスチナの自己否定と内部崩壊、さらには外部との新たな紛争につながっていただろう。今回に関していえば、決裂は合意よりはるかにましな選択だった」(パレスチナのスポークスパーソンを務めたハナン・アシュラウィ女史)「エルサレムやパレスチナ難民の問題で譲歩を示したイスラエルの首相はバラク氏が初めてであり、彼が最後になるかもしれない。パレスチナ人はチャンスを逃す機会だけは逃さないといわれてきたが、今度ばかりはチャンスを逃さないことを願う」(イスラエルの広報担当を務めた労働党国会議員、アビタル・コレット女史) 九月十三日に合意期限が迫っている「パレスチナ最終地位交渉」の局面打開を狙うクリントン米大統領が、イスラエルのバラク首相、パレスチナ自治政府のアラファト議長を米ワシントン郊外の大統領山荘キャンプデービッドに招き、七月十一日から始まった中東和平三首脳会談は、具体的な合意を生み出さずに物別れに終わった。 クリントン大統領の沖縄サミット出席をはさんで二週間に及んだ三首脳の集中協議では、これまでイスラエルとパレスチナ両当事者だけでは踏み込めなかった聖地エルサレムの帰属やパレスチナ難民の帰還といった「コア・イシュー」(核心の問題)について初めて具体的な議論が行なわれた。歴史的経緯を考慮すれば、それ自体を「一定の成果」として前向きに評価することもできようが、核心に触れた議論は逆に双方の溝の深さと妥協の限界をも浮き彫りにし、交渉再開への道筋がいよいよ見えなくなるという混迷状態を生み出してしまった。

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