ASEAN地域フォーラムに食われた沖縄サミット

執筆者:田中明彦2000年8月号

 世界的にみると、G8サミットは日本においてほど注目を集める会議ではない。したがって、G8サミットの成果やテーマについて世界の論壇が注目しないのは、それほど異様なことではない。しかし、故小渕恵三前総理が、わざわざ沖縄で首脳会議を開くことにしたのは、それなりに世界の目をアジアに、そして沖縄に向けさせるという意図があってのことだろう。そうだとすると、沖縄で開催されたG8サミットが、あまり世界の関心を集めなかったことは、小渕前総理にしてみれば残念なことであったろう。 ただし、海外で全般的には大して関心が盛り上がらなかったなかで、世界のメディアがこのサミットに注目したのが、サミットに費やされた莫大な費用のわりに具体的成果がほとんどなかったということだった。『エコノミスト』誌は、社説で皮肉たっぷりに、「たくさん約束するが何も実現しない」と指摘している。「指導者たちは、これから二〇〇一年にジェノバで開催されるサミットまでの間、連絡をとりあう(もちろんEメールで)と語った。『今や新しい時代が始まった』のだから、それくらいするのが当然であろう。しかし、実際のところは、それしかやらないのではないか。それなら、この驚くべき新たな通信手段を使って、自己満足にすぎないおしゃべりのテーマを決めるのではなく、何を実現するかについてのテーマを決めることに専念すべきだったのではないか。それができないなら、この嘆かわしい騒ぎは、もうやめにしたらどうだろう」とサミット廃止論を説くのである(“On top of the world,”『エコノミスト』七月二十九日号)。

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