失政のツケを払うのは結局サラリーマン たび重なる保険料のアップ、将来の給付切り下げで、加入者であるサラリーマンの信頼をすっかり失った感のある厚生年金。ところが、ここに至って、また新たな負担増になりかねない動きが出てきた。農協や漁協の職員が加入する農林漁業団体職員共済(農林年金)の財政破綻が避けられないため、厚生年金に救済合併させることを政府が検討し始めたからだ。 政府は、いずれ公務員共済など他の制度も統合、公的年金を一元化するので、今回の救済は経過的措置だと説明している。しかし、他の共済は負担の増える統合には消極的で、一元化の具体的なスケジュールは見えていない。このままではサラリーマンだけが負担を押しつけられかねない状況だ。勝手に統合を決めた農林年金 わが国では、全国民が基礎年金に加入。サラリーマンや公務員など、雇われて働く労働者(被用者)は、基礎年金に加え、現役時代の給与水準に応じて将来の給付額が決まる被用者年金に加入している。 被用者年金は厚生年金(加入者三千二百九十六万人)、国家公務員共済年金(国共済、百十一万人)、地方公務員共済年金(地共済、三百三十一万人)、私立学校教職員共済年金(私学共済、四十万人)、農林年金(四十八万人)の五制度がある。各制度とも、老齢時の年金給付に大きな差はない。ただし、現役世代が支払う保険料率は、厚生年金が月収の一七・三五%(いずれも労使折半)なのに対し、最も高い農林年金は一九・四九%、最も低い私学共済は一三・三%と、かなりの格差がある。これは、わが国の公的年金が、高齢者への年金給付の財源を、その時の現役世代の保険料で賄う「世代間扶養」方式をとっていることに原因がある。この方式の場合、現役世代が少なく、受給者が多い制度ほど、保険料は高くなる。

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