連結経済化する世界と「内向きの国」日本

執筆者:小暮史章2000年9月号

上昇が続く原油価格の背景にある国際政治のパワーゲーム、ユーロ安をもたらす欧州から米国への膨大な直接投資、そして世界経済のダイナミズムの中で存在感のない日本。ムーディーズによって国債の格付けも引きさげられ――。 上昇を続ける原油価格、中東和平交渉、そしてOPECサミット(石油輸出国機構首脳会議)――。三題噺めくが、中東がなにやら気にかかる。そういえば、米民主党の副大統領候補のリーバーマン氏も、敬虔なユダヤ教徒である。内向きのニュースに明け暮れる日本では見えないところで、新世紀に向けたオイルとマネーのパワーゲームが始まっているのかも知れない。 原油価格が上昇を続けている。ニューヨーク・マーカンタイル取引所で取引されているWTI先物相場は、九月七日に一バレル=三五ドル台と春先の高値を更新した。イラク軍がクウェートに侵攻した一九九〇年の湾岸危機以来の高値である。米国内ではガソリンスタンドでガソリン価格が毎週のように更新され、一般市民も原油高の影響を肌身で感じ始めた。 OPEC諸国による今年に入って二度の増産合意にもかかわらず、原油価格が上昇し続けていることで、気の早い原油アナリストたちからは、「湾岸危機直後につけた最高値である四一・一五ドルを上回る可能性がある」との指摘もでている。有事に一時的につけた原油価格を、平時に上回るとしたら、それこそ一大事である。

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