ロシアのプーチン大統領は五月の正式就任以来、エリツィン前大統領との関係が疎遠になっているといわれていたが、ここに来て遂に政治的恩師との訣別を決意したようだ。 モスクワの消息筋が「二人の訣別の象徴」と一様に指摘するのは、十月七日モスクワ市内で行われたエリツィン氏の自伝『大統領のマラソン』出版記念式典にプーチン大統領が欠席したこと。 式典にはカシヤノフ首相はじめ政府要人が出席したが、プーチン大統領は「故郷のサンクトペテルブルクで四十八歳の誕生日を家族水入らずで祝うため」(大統領側近筋)として招待を断った。「半年も前から、エリツィン氏はわずかな時間でもいいから出席してくれるよう依頼していた」(エリツィン氏周辺)が、大統領はエリツィン氏に招待辞退の連絡をとることもなく、故郷へ向かったという。 これより先、大統領は「エリツィン氏が最も嫌いな二人のロシア人」とされるゴルバチョフ元ソ連大統領とノーベル賞作家のソルジェニーツィン氏とも公に会談しており、消息筋は「エリツィン氏から政権を禅譲されたころの負い目や気兼ねがなくなったようだ」と指摘している。

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