大統領選が明らかにしたアメリカという国

執筆者:田中明彦2000年12月号

 アメリカ大統領選挙の結果が、どんなものになるかにかかわらず、この一カ月の間で世界の人々はアメリカ合衆国という国がいかなる国であるのかについて、かなり理解を深めることになった。 世界で最も影響力のある国がどんな仕組みで動いているのか。どんな仕組みで動かなくなっているのか。驚き、あきれつつも、見守らざるをえない。アメリカの政治体制の仕組みとその限界を示した最近の事例でいえば、クリントン大統領のモニカ・ルインスキー問題もそうであったし、さらに遡れば、ニクソン大統領辞任に至ったウォーターゲート事件もそうであった。 しかし、ルインスキー問題もウォーターゲート事件もともに不倫騒動や刑事事件に絡む異常事態が、アメリカ政治の姿の一側面を映し出したのに対し、今回の事態は、アメリカの政治制度が、正常に機能した結果起こったところに特徴がある。アメリカ人も含めて世界中の人々は、通常表に出てくることのないアメリカの制度の特徴を目の当たりにすることになったのである。アメリカの制度の古さ 筆者もアメリカの制度については、それなりに勉強してきたつもりであったが、この一連の事態を見て、いくつか再確認せざるをえないことがあった。

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