「今の日本の姿は『火宅の人』だ。家のあちこちに火が付き、ボーボーと炎が上がっているのに、家人はそれと気付かず、中で子供が無邪気に遊んでいる」 綿貫民輔衆院議長が小渕派会長当時によく口にした憂国の言葉だ。一昨年秋の自自連立合意から今年四月の自由党連立離脱まで、綿貫氏は小沢一郎自由党党首との個人的なパイプを生かし、ある時は自主的に、またある時は自民党執行部から頼まれ、小沢氏の「なだめ役」を務めてきた。 事ある毎に政権離脱をちらつかせる小沢氏のやり方はいただけない、しかし小沢氏の政策提言に耳を貸さない自民党は危機感がなさすぎる。社会保障費増大に対応するための消費税率引き上げは必要ではないか。小沢氏という「外圧」を利用して一気に構造改革を進めようという発想になぜ立たないのか。自由党というクッションがなくなれば、公明党との関係も長続きしない。なぜそれに気付かないのか――。 最大派閥の会長といっても、オーナー会長の故小渕恵三前首相の留守を預かっていただけの「雇われ」の身。思い通りにならない自民党の現状に悲憤慷慨し、漏らした言葉が「火宅の人」だった。 森喜朗首相退陣を求めた加藤紘一元幹事長の反乱が腰砕けに終わり、十一月二十一日未明、森内閣不信任決議案はあっけなく否決。あらためて国会で信任を受けた形の首相は臨時国会終了後の十二月五日、内閣改造を断行し第二次森改造内閣をスタートさせた。

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