結局、NTT完全分割は先送り。このままでは、日本経済の凋落は必至。「後進国に転落した日本の情報技術(IT)環境の再構築」という理想は、焼け太りを狙う総務省(旧郵政省)にとって、便利な隠れ蓑に過ぎなかったようだ。 電気通信審議会(郵政相の諮問機関)が昨年暮れ、まとめた答申「IT時代の競争促進プログラム」はその立派なタイトルとは対照的に、「NTT完全分割」などの本質論をすべて先送りしたうえで、官庁の予算権限拡大だけを優先する内容に貶められている。背後で官庁の焼け太り構想を支える自民党郵政族や日本電信電話(NTT)などの魑魅魍魎の跋扈も見逃せない。ユニバーサルサービスの「詐術」 郵政相を兼務していた片山虎之助自治相(現・総務相)に対し、那須翔・電通審会長(東京電力相談役)から注目の答申が手渡されたのは、暮れの押し迫った二〇〇〇年十二月二十一日。日本がIT後進国に転落した最大の原因は「高くて遅い」と酷評される通信インフラにあることがほぼ周知の事実となっており、今回の電通審答申は問題の通信インフラの改善策を打ち出すものとして関係者や経済界の期待を一身に集めていた。そして、できあがった答申もタイトルを見る限り、「IT革命を推進するための電気通信事業における競争政策についての第一次答申――IT時代の競争促進プログラム」と大上段に振りかぶっており、懸案の解決に思い切ったメスを入れたかのような体裁になっている。

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