「税理士対会計士」不毛の対立

執筆者:石山新平2001年3月号

紛争の本質はお互いの仕事のとりあいに他ならない 税理士と公認会計士の業界を挙げた職域争いが過熱している。かつては株式を上場するような大企業は公認会計士、中小企業や個人は税理士という暗黙の縄張りがあったが、中小企業にまで株式上場が広がるなど、その線引きは年々あいまいになっている。一般の国民からみれば、ともに決算数字を扱う“兄弟資格者”だが、なまじ関係が深いだけに、泥仕合に発展しかねない様相だ。先制パンチは税理士から 今回の紛争は、税理士の業界団体である日本税理士会連合会(日税連)の先制パンチで幕を開けた。 昨年九月、日税連は理事会を開催、十五項目にのぼる「税理士法に関する改正要望書」を決定、国税庁に提出した。その中に会計士業界との長年の懸安事項であった「許可公認会計士制度の廃止」が盛り込まれていた。日税連は十月二日になって副会長らを、会計士の業界団体である日本公認会計士協会に派遣し事後通告。慌てる会計士協会役員の翻意要請には一切耳を貸さなかった。 公認会計士は税理士法で「税理士となる資格を有する」と規定され、会計士の資格を取ると自動的に税理士となる資格も得られる。その規定に基いて、公認会計士なら小規模な税理士業務に限って、税理士会に登録・入会しなくても国税局長の許可さえ得られれば税理士業務が行えるという特例措置が「許可公認会計士制度」だ。もともとは税理士会に「通知」するだけで税理士業務が行なえたが、長年の職域争いの結果、会計士サイドが大幅に後退。「許可公認会計士制度が最後の橋頭堡」(ベテラン会計士)になっていた。ちなみに、会計士同様、特例が認められている弁護士の場合、今でも「通知」だけで税理士業務が行える制度が続いている。

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