驚異的な粘り腰で「森おろし」の集中砲火に耐えてきた森喜朗首相がついに土俵を割ったのは、自民党大会を三日後に控えた三月十日の夜だった。「党大会のあいさつの文案について、私なりに考えてみたのでご検討いただきたい」 午後九時前、首相官邸の執務室に集まった古賀誠幹事長、亀井静香政調会長、村岡兼造総務会長、竹山裕参院議員会長、青木幹雄参院幹事長の自民党五役を前に、首相は神妙な表情でメモを配り、自らゆっくりと読み上げた。「三月五日に内閣不信任案が否決され、参院での来年度予算案審議が続行されている現在、内閣としては予算と関連法案をはじめ、その他重要法案成立に向け、全力を挙げることが国民への責任を果たすものと信じます」「さらに米国、ロシアとの首脳会談をはじめとする外交課題にも全精力を傾注します」 あいさつ前段は当面の重要課題として、予算審議に加え、三月十九日にセットされたブッシュ新大統領との初の日米首脳会談、二十五日にシベリア・イルクーツクで行うプーチン大統領との日ロ首脳会談を挙げ、引き続き政権担当に強い意欲を示すとともに、党側に協力を求める内容だった。とはいえ、予算は遅くとも三月下旬、関連法案も予算執行に支障をきたす日切れ法案は四月初めには成立する見通しだ。あくまで期限付きの意欲表明にすぎなかった。

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