北朝鮮の金正日総書記の長男、金正男氏の身柄拘束劇の背後で、亡命説が根強くささやかれている。 公安当局によると、(1)過去の入国時には複数の随行員を伴っていたのに、今回は家族だけだった(2)トランクの中に大量の百ドル紙幣を所持していた(3)観光目的ならば、偽造旅券での入国は不自然――などが亡命説の論拠となっているという。 公安筋は、「身柄拘束情報のリーク、異例の国外退去など一連の動きは、亡命隠しとすれば、分かりやすい」と解説している。「男性が、亡命の意思表示をして、日本政府が慌てた可能性がある」(政府筋)と見る向きもある。 また、亡命説が消えない背景には、北の後継者問題が指摘される。 公安当局によると、長男の金正男氏よりも異母弟の金正哲氏のほうが、後継者としての力をつけ始めているとの情報があるという。 公安筋は、金総書記が来年の還暦を機に、後継指名する可能性が強く、そうした流れの中での亡命劇だったのではないかと解説する。 金正男氏は、依然として北京に滞在。「帰国できない背景がある」(公安筋)との指摘も出ており、関係者が情報収集に全力を挙げている。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。