世界中を驚かせた小泉新政権の誕生

執筆者:田中明彦2001年5月号

 小泉内閣の誕生は、日本人の多くにとってのみならず世界的にも衝撃的であった。日本国内の関心が、小泉新政権の動向に集中したのは当然であろう。 しかし、その間、日本を取り囲む東アジア情勢は、とりわけ米中関係を中心に微妙な緊張感を漂わせていた。また、アメリカでは、中国への対応なども含め、ようやくブッシュ新政権の特徴が明らかになりつつある。「変人」首相への期待と不安 四月はじめの時点で、日本人のほとんどが小泉新政権の誕生を予想しなかったように、世界的にも小泉政権の誕生を予想していた者はほとんどいない。たとえば、自民党総裁選が一週間後に迫ったころですら、『ワシントン・ポスト』紙社説は、橋本龍太郎元首相の返り咲きを前提とした議論を行なっていた。「日本政治の悲惨な水準からすれば、彼は期待のもてる選択だ」と見なし、「日本の政治的経済的漂流は、日本人にとっても世界経済の今後にとっても、あまりにもひどい状況であり、指導層に何らかの変化がおこるのであれば、いずれでも歓迎だ」と論じていたのである。さらにいえば、同紙社説は、橋本元首相が行政改革に熱心であったことをそれなりに評価していた。この時期の日本では、すでに橋本元首相に対する、とりわけ自民党支持者の間で広がっていた反感については、同紙社説はやや鈍感であったと言わざるをえない。そして、同紙社説は小泉純一郎という名前に言及すらしていなかった(“Change in Japan,”『インターナショナル・ヘラルド・トリビユーン(IHT)』、四月十七日)。

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