パキスタン「タリバン化現象」の危険

執筆者:春日孝之2001年5月号

アフガンのタリバン内でウサマ・ビン・ラディンの影響力が増大する中で――[イスラマバード発]アフガニスタンのイスラム原理主義勢力タリバン政権の最高指導者ムハマド・オマル師は二月末、バーミヤンの大仏など国内の仏像破壊を命じる布告を出した。かたくなな姿勢を変えないタリバンに対し、国際社会は当時、「最後の説得」を隣国パキスタンに託した。密かにタリバン支援を続けているとして、国際社会の非難を浴びていたパキスタンが一転、影響力を期待され、破壊中止を働きかける特使を派遣することになった。 パキスタン軍政指導部は、大雑把に、軍部を中核とする強硬派と経済関係閣僚を中心とする穏健派に色分けできる。軍政トップのムシャラフ陸軍参謀長は、国家危急の課題である経済再建を最優先する立場から、昨年三月のクリントン米大統領(当時)のパキスタン訪問を機に国際協調路線に大きく舵を切り、穏健派とみなされている。 タリバンの本拠地カンダハルに飛んだのは、陸軍参謀長の側近モイヌディン・ハイダー内相だ。内相はオマル師との会談で、「仏像破壊は正しい方向ではない。イスラムは千四百年もの間、アフガンに生き続け、仏像も存在し続けた。仏像は文化遺産として破壊されなかったではないか」と諭した。オマル師は「我々は国際社会の声に耳を傾ける用意はあるが、自らの文化に関わる問題では一切妥協しない」と語り、口出しは内政干渉だと一蹴した。

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