パキスタン「タリバン化現象」の危険

執筆者:春日孝之 2001年5月号
エリア: アジア

アフガンのタリバン内でウサマ・ビン・ラディンの影響力が増大する中で――[イスラマバード発]アフガニスタンのイスラム原理主義勢力タリバン政権の最高指導者ムハマド・オマル師は二月末、バーミヤンの大仏など国内の仏像破壊を命じる布告を出した。かたくなな姿勢を変えないタリバンに対し、国際社会は当時、「最後の説得」を隣国パキスタンに託した。密かにタリバン支援を続けているとして、国際社会の非難を浴びていたパキスタンが一転、影響力を期待され、破壊中止を働きかける特使を派遣することになった。 パキスタン軍政指導部は、大雑把に、軍部を中核とする強硬派と経済関係閣僚を中心とする穏健派に色分けできる。軍政トップのムシャラフ陸軍参謀長は、国家危急の課題である経済再建を最優先する立場から、昨年三月のクリントン米大統領(当時)のパキスタン訪問を機に国際協調路線に大きく舵を切り、穏健派とみなされている。

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執筆者プロフィール
春日孝之(かすがたかゆき)  1961年生まれ。1985年、毎日新聞社入社。95~96年、米国フリーダムフォーラム財団特別研究員としてハワイ大学大学院(アジア・中東史)留学。ニューデリー、イスラマバード、テヘラン支局などを経て2012年4月よりアジア総局長。現在ヤンゴン支局長兼務。アフガン、イラン、ミャンマー報道でそれぞれボーン・上田記念国際記者賞候補。著書に『アフガニスタンから世界を見る』、『イランはこれからどうなるのか―「イスラム大国」の真実』、『未知なるミャンマー』。
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