【ブックハンティング】バーミアンの大仏破壊 それは何を意味したのか

執筆者:春日孝之 2005年4月号
エリア: アジア

 二〇〇一年三月、アフガニスタンのバーミアンにある二体の大仏が破壊された。破壊したのは、当時アフガンの約九割を支配していたタリバン政権だった。だが『大仏破壊』の“主人公”の一人、タリバンのホタク元情報文化次官はこう証言する。「大仏の破壊は、タリバンの本来の意志でも、方針でもありませんでした。私たちの大部分は破壊に心から反対だったのです」。 ではなぜ、大仏破壊に至ったのか。この謎に挑んだ著者の高木徹氏(NHK報道局)は、綿密な取材と巧みな文章構成で迫真のインサイドストーリーに仕上げている。 発端は、アフガンの全土統一を目指すタリバンの最高指導者オマル師と、国際的な反米ネットワーク「アルカイダ」を率いるビンラディンの「出会い」だった。対ソ連のアフガン戦争当時、ムジャヒディン(イスラム戦士)として闘争に参加したオマルは、当時アラブ義勇兵として加勢してくれた「同志」が反米に転じて母国サウジアラビアを追われ、アフガンに逃れてきたのを「客人」として保護する。

カテゴリ: カルチャー
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執筆者プロフィール
春日孝之(かすがたかゆき)  1961年生まれ。1985年、毎日新聞社入社。95~96年、米国フリーダムフォーラム財団特別研究員としてハワイ大学大学院(アジア・中東史)留学。ニューデリー、イスラマバード、テヘラン支局などを経て2012年4月よりアジア総局長。現在ヤンゴン支局長兼務。アフガン、イラン、ミャンマー報道でそれぞれボーン・上田記念国際記者賞候補。著書に『アフガニスタンから世界を見る』、『イランはこれからどうなるのか―「イスラム大国」の真実』、『未知なるミャンマー』。
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