昨今の槙原稔ほど、その言動に興味を掻き立てられる日本人経営者はいない。三菱商事会長であるとともに、「金曜会」(三菱系企業の社長会)の世話人代表として三菱グループ総帥といえる立場にあり、瓦解寸前の旧財閥の行く末を一身に託されている。 昨年、三菱自動車工業が度重なる不祥事と業績不振で破綻の危機に瀕した際、槙原は「三菱は国籍など問わない」と言い、ダイムラークライスラーによる救済劇のお膳立てをした。三菱グループ内から当然のように湧き起こった「スリーダイヤブランドを外資に売り渡す気か」という批判を、「純血よりも、大切なのは理念」と撥ねつけ、そのスタンスは少しも揺るがなかった。 経団連副会長(貿易投資委員長)のポストにあり、日米財界人会議や賢人会議として名高い「ダボス会議」の共同議長を務め、米IBMの社外取締役、ダイムラークライスラーのユルゲン・シュレンプ会長の私的諮問機関メンバー、さらには“日本買い”攻勢をかける米投資ファンド、リップルウッド・ホールディングスCEO(最高経営責任者)ティム・コリンズの顧問役などとしても名前が登場する。名実ともに日本の財界を代表する国際派であるが、四月の小泉政権誕生後、民間人初の在米・在英日本大使の有力候補者として取り沙汰された時期もあった。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。