「市場警察」米国SECの凄味

執筆者:2001年8月号

九百人の捜査官を抱え、抜群の機動力で不正行為を摘発。単なる金融規制当局を超えた、「市場警察」の内情とは――。 米首都ワシントンDCの中心街、五番通りに面する証券取引委員会(SEC)。オフレコを条件に捜査局の幹部V氏を訪ねた。V氏は四十歳の若さでSEC捜査局のチーム長に上りつめた敏腕デカ。法律書や捜査書類がずらりと並んだ執務室の机の上には、二冊の分厚いファイルが積まれている。 白い表紙には、青字で大きく「ハーベイ・ピット」と新しいSEC委員長の名前。中身は何? 「株価が下がっているからタレコミが多い。新しいボスに頼まれて、現在進行中の捜査を説明する資料をファイルにまとめた」とV氏。「いんちきアナリスト、ネットのグル、粉飾決算企業――“BAD GUYS”(悪い奴)を一掃するには今がチャンスだ」。ミニバブルが弾けた米株式市場。新委員長あての捜査ファイルには、投資家の不満がギッシリ詰まっている。 現在、米ニューヨーク証券取引所への上場を準備している日本企業はNEC、三井物産、野村證券など三十社近くある。「知名度や資金調達力を高めたい」というが、何人の社長が「SECの力」と「捜査局幹部の意気込み」に気付いているのだろうか。ちなみに現在、米弁護士の間で「ヤバイ」と噂されている日本企業に、NY証取に上場しているT銀行がある。二〇〇〇年度に多額の不良債権を償却したことが「不透明な会計処理に当たる」というわけだ。SECのシマでは、国策会計は通用しない。

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