ロシア加盟も謳う「NATO東方拡大」の虚実

執筆者:藤村幹雄2001年9月号

アメリカで語られ始めた、かつての「主敵」をNATOに加盟させる構想――。つねに揺れ動く「米中ロの三角関係」をさらに複雑化させる要因が出現した。「ロシアは将来、米国の同盟国になれる」――。六月十六日、スロベニアで行なわれた米ロ首脳会談のキーワードは、ブッシュ米大統領のこの発言だった。米政府内部では、将来の北大西洋条約機構(NATO)拡大で、ロシアをNATOに加盟させる選択肢が検討されつつある。冷戦時代の「主敵」がNATOに加盟すれば、欧州安保情勢は劇的に転換し、中国に最大級の圧力が掛かることになる。NATOがアジアに進出する可能性はあるだろうか。 NATOは来年秋、チェコのプラハで首脳会議を開き、NATOの新規加盟国を決定する。NATOは一九九九年四月、ワシントンでの首脳会議でポーランド、ハンガリー、チェコ三国を加えて十九カ国に拡大しており、来年が第二次東方拡大の年となる。現在、NATO加盟を申請しているのは、ルーマニア、スロベニア、スロバキア、クロアチア、ブルガリア、マケドニア、アルバニア、リトアニア、ラトビア、エストニアの十カ国。この十カ国は今春、リトアニアで外相会議を開き、十カ国が同時加盟する「ビッグ・バン」の実現を呼び掛けた。

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