悲劇のハク元司令官 CIAとの連携説は誤報

執筆者:春名幹男2001年11月号

 米カリフォルニア州ヘイワードのモスクで十一月四日、イスラム教の形式に則って厳粛に、反タリバン勢力の有力指導者、アブドル・ハク元司令官(四三)の葬儀が執り行なわれた。 喪主はアブドル・マジード・アルサラ君(一六)。同州ユニオンシティの高校二年生。十月二十六日、アフガニスタンの首都カブール郊外のタリバン基地、リシコルで処刑された、ハク氏の長男である。 約百人の参列者を前に、マジード君は「祖国が私を必要とするなら、私だって戦う」と男らしく語った。母も弟も刺客に暗殺され、アメリカに渡り、いとこたちと暮らしていたが、今度は父も失った。 ソ連侵攻時代、地雷で右足を失いながら果敢に戦い「アフガニスタンのライオン」と呼ばれた男が、今度の戦争ではタリバン部隊の待伏せ攻撃で孤立、最後の段階でようやく米無人機の来援を受けたが、力尽き捕まってしまった。 しかも、米中央情報局(CIA)とは事実上けんか別れしたまま、実質的な支援は受けず、軽装備で祖国に潜入したのに、死後も「CIAと連携した秘密工作」と報道された。日本の報道はほとんどが誤報だ。ハク元司令官の最後は悲劇としか呼びようがない。 誤解されたハク氏の潜入劇、そしてCIAとの関係の真相は、ロバート・マクファーレン元大統領補佐官(国家安全保障問題担当)によって、このほど初めて明らかにされた。

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