「経済戒厳令」は間に合うか

執筆者:2001年12月号

堰を切ったような企業破綻、売り叩かれる金融株。不良債権問題は軟着陸のタイミングを完全に失った。問題はもはや、何をすべきかではない。いまやるか、座して死を待つかだ―― 年末を控えて世界の金融市場に、リスクという妖怪が徘徊している。米エネルギー大手、エンロンの経営破綻は、安全な金融商品だったはずのMMF(マネー・マネージメント・ファンド)の元本割れを引き起こした。数兆円規模の解約は国内の短期金融市場に緊張を呼び起こし、日銀は九月の同時多発テロ直後を上回る大量の資金供給を余儀なくされた。株式市場で売り叩かれていた都市銀行の資金繰りが行き詰まりかねなかったからだ。 信用リスクを取引するクレジット・デリバティブの市場では、エンロンの破綻の損失が取引相手の金融機関に転嫁される形で、疑心暗鬼が広がっている。自らの成長を担保に出世払いの形で資金を調達してきたエンロンの錬金術は、信用リスクを甘く見た投資家が支えてきた。その矛盾が爆発したことで、投資家たちは復讐を受けている。 しかもデリバティブ取引は「仕組み債」のなかにも組み込まれている。「仕組み債」は利回りが高く、日本の投資家も喜んで購入していたが、なんのことはない。リスク分の金利が上乗せされていただけである。一九九八年のロシア経済危機の際にも損失を被ったはずなのに、運用対象難ということで、また毒饅頭を食らっていたのだ。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。