ユーロ導入=Eデイは欧州統合をどう進めるか

執筆者:田中明彦2002年1月号

 年末から新年にかけては、過去一年を振り返り、新たな年への展望を考えるのが通例である。二〇〇二年の新年にあたっては、過去一年の世界を振り返って、九月十一日のアメリカへのテロ攻撃を思い浮かべない者はない。しかし、新たな年の展望についてはどうか。それほど一致した見方はないかもしれないが、やはり目についたのはユーロであった。本年最初の国際論壇レビューもユーロをめぐる議論から振り返ってみることにしよう。     * 帳簿上はユーロは一九九九年から使われており、その意味で何も新しいことではない。しかし、やはりユーロという紙幣とコインが出回るということのシンボリックな意味を軽視できないであろう。これまで千リラ札を小銭として日常的に使っていたイタリア人たちが、小銭としてはコインを使うようになる。もう大量にお札を持ち歩くイタリア人を見ることはなくなるのかもしれない。千リラはユーロでは五十二セントにしかならないからである(日本円では六十円前後)。『ニューヨーク・タイムズ』紙の社説がいうように「Eデイと担当者たちが呼んでいるこの日は、単に実務的な大仕事とか、あるいは財政上の一里塚というだけにとどまらない。この日は、政治的重要性のある日なのである。ユーロが流通することによって、半世紀前にフランスの先覚者ジャン・モネが構想したヨーロッパ統合のプロセスに、最も力強く、眼に見えるシンボルが誕生するからである」(“Now Comes the Euro”『インターナショナル・ヘラルド・トリビューン(IHT)』、一月二日)。

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