米大統領が年頭に行なう一般教書演説の夜、上下両院本会議の正面ギャラリーを見ると、大統領の政治的狙いがはっきり読み取れる。今年、この“儀式”に、ブッシュ大統領は、アフガニスタン暫定行政機構のカルザイ議長やサマル女性問題相、アル・カエダ兵を尋問中に殺された米中央情報局(CIA)要員マイケル・スパン氏のシャノン未亡人らを招いた。 しかし、米中枢同時多発テロで最も劇的かつ非業な死を遂げたあの男の遺族の姿は見られなかった。 ジョン・P・オニール。享年五十。同時多発テロに関する調査委員会が米議会で開かれれば、彼の名前は必ず、「オサマ・ビン・ラディンを追った米連邦捜査局(FBI)特別捜査官」として話題になるはずだ。だが、いま一部で、彼の死のおかげでブッシュ政権は真実を隠せた、との憶測が広がっている。 オニールはFBIの元国際テロ対策部長で、FBIではビン・ラディンとアル・カエダを最も熟知した専門家として知られたが、失意のうちに八月に辞任したばかり。世界貿易センターの保安部長として再就職した、その翌日にテロの現場で死んだのである。リノ前司法長官が「(イスラム原理主義のテロの問題なら)まずジョン・オニールに聞け」と言ったほどの専門家で、フリー前FBI長官の信任も厚かった。

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