居酒屋「権八」はなぜ選ばれたのか

執筆者:西川恵2002年4月号

 来日中のブッシュ米大統領が小泉純一郎首相と東京・西麻布の居酒屋「権八」で夕食をとったとのニュースが伝わったとき、私が所属する新聞社のセクションでは誰一人、この居酒屋を知らなかった。 私も不案内だったが、時折、仲間と行っているエスニックの「モンスーンカフェ」と同じ「グローバルダイニング」の傘下にあると聞いておおよそ見当がついた。料理と値段のコストパフォーマンスが良く、サービスは行き届き、雰囲気も洒落ている。「あの系列のところなら両首脳の夕食の場として面白いだろう」と思わせた。 グローバルダイニングは、アジア、メキシコ、イタリア料理とさまざまな業態の外食産業を、日本ばかりか米国でも展開している。団塊の世代である社長の長谷川耕造氏は「昇給の自己申告制」「全員の給与明細、会議の情報公開」といったシステムを取り入れた独特の経営哲学で知られている。 昨年、フランス商工会議所が東京在住のフランス人会員を対象に「最も革新的な日本企業」について行なった調査では、農水産加工業に関わる会員の半数がグローバルダイニングを挙げた。米大使館のリネハン広報部長も「第一に治安、第二に報道関係者が取材できる広さを念頭に日本側と相談して選びましたが、権八は実は米大使館員もよく行っているところです」と語るように、外国人の支持が高い。

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