NTTドコモは二〇〇二年三月期決算で一般企業で過去最大級の九千二百億円の特別損失を出す見込みと発表した。過去二年間に買い漁った五カ国・地域の携帯電話会社の株式が軒並み下落、評価損計上を余儀なくされたためだ。発表の席上、経営責任を追及された立川敬二社長は、涼しい顔で「(通信)バブル崩壊は神様じゃなきゃわからなかった」と開き直った。百歩譲って運が悪かったとしても、出資の本来の目的であるインターネット接続サービス「iモード」の海外普及や次世代携帯電話での陣営作りは進んだのか? 答えは否。これこそドコモの「屈辱外交」といえる。「最近、中村さん、何してるんだろう」――。ドコモ社内で近ごろ安否が話題になる人物がいる。海外展開の司令塔である国際ビジネス部の中村康久担当部長。二〇〇〇年にドコモが米大手の携帯電話会社AT&Tワイヤレス(ATTW)の株式一六%を約一兆七百九十二億円で取得した後に、技術部長兼モバイル・マルチメディア事業子会社のCTO(最高技術責任者)として送り込んだ人物だ。 CTOの指名権は出資契約にも盛られている。ドコモはiモードを全米に広めるための重要ポスト、と説明してきた。その中村氏が昨年十二月末にCTO兼務を解かれ、技術部長専任となった。後任CTOには米国人役員が就いているという。これについてドコモは「事業子会社はiモードの米国展開の拠点。そもそも中村の専門は次世代携帯分野なので、兼務を解いた。後任CTOを指名しなかったといっても、技術面の貢献は必要で常に人が行き来しており、問題はない」(広報部)と説明する。

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