低コストを武器に「世界の工場」となりつつある中国。繊維など日用品からはじまり、いまや家電やオートバイ、精密機器まで日本の製造業を脅かす存在となっている。企業の経営者の間には「中国にはかなわない」といった無力感すら漂うほどだが、一方では、コツコツと積み上げてきた技術特許をはじめとする知的財産を改めて見直し、それをもとにした新たなビジネスチャンスをうかがう企業も現れ始めた。 VTRに代わる家電のDVD(デジタル多用途ディスク)プレーヤー。ソニーは昨年春、中国で製造された製品が自社の特許を侵害しているとして、中国製DVDプレーヤーを米国で輸入販売しているAPEX社に対して、特許契約を結ぶよう要求した。 APEX側がこれに応じなかったため、今年三月にはニューヨーク南部連邦地裁に販売差し止めを提訴。APEXはソニーの厳しい姿勢に態度を和らげ、四月になって、ようやく特許利用の契約を締結。ソニーは米国で十億円を超えるとされた特許料未払いによる損害を、なんとか食い止めることに成功した。今後APEXは契約にもとづき、DVDプレーヤーを一台売るごとに一定の金額をソニー側に支払わなければならない。 支払うべき多額の特許料を払わぬまま、製品のシェアをひたすら拡大させる中国のメーカー。日本企業はいま、この「模倣大国」を強く意識しながら、知的財産権の保護に神経を尖らせている。

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