唱えられ始めた北方領土「三島返還」

執筆者:城山達也2002年7月号

株式市場風に言うなら、いまの日露関係は「悪材料が出尽くして底入れ」。プーチン再選後に関係修復がなされれば、北方領土問題で「三島返還」も選択肢になり得る―― 鈴木宗男衆院議員の一連のスキャンダルや外務省ロシアン・スクール幹部の処分、北方領土の「並行協議」方式の破綻で、日露関係が再び「氷河期」に陥っている。だが、株式市場風に言うなら、日露関係は「悪材料が出尽くして底入れ」の状態といえる。ロシアの人口減や世代交代、対米傾斜、対中脅威感が今後、日露関係の中長期的な改善要因になるとみられる。日露関係は今が「買い」なのだ。「鈴木宗男さんは日露関係の発展に努力したすぐれた政治家。東郷和彦元欧州局長と佐藤優元主任分析官は外務省最高のロシア通だ」――。ロシアのパノフ駐日大使は講演などで鈴木氏らを一貫して擁護している。その一方で「ロシアは日本に四島支援を求めたことはない」「四島支援事業は島を訪れる日本人向けの援助だ」とも言い放つ。パノフ語録は日本政府内に不快感を呼び起こしている。 日露両国は実は、カシヤノフ首相が六月に来日し、九日のサッカー・ワールドカップの日本―ロシア戦を小泉純一郎首相と一緒に観戦するという粋な構想を水面下で計画していた。しかし、鈴木問題に伴う混乱で、ロシア側が準備を中止、首相訪日は秋以降に延期された。川口順子外相や中谷元・防衛庁長官の訪露計画も宙に浮いたまま。両国が昨年合意した小泉首相の年内訪露もほぼ不可能な情勢で、鈴木問題が日露関係に残した傷跡は大きい。在京ロシア筋は、「事務レベルの協議が混乱しており、日露の政治対話は縮小せざるを得ない」と指摘した。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。