NATOとロシアの合意の舞台回しを務め、さらには中東和平の仲介にも積極的に関与――。ベルルスコーニ伊首相の動きからは、「独仏枢軸」への反発とメディア支配への深謀が読みとれる。[ミラノ発]昨年六月に正式発足したイタリアの中道右派ベルルスコーニ政権が国際政治の舞台で存在感をじわりと発揮しつつある。北大西洋条約機構(NATO)とロシアによる初めての意思決定機関の創設を盛り込んだ「ローマ宣言」の調印を主導したほか、中東和平への仲介外交にも積極的に関与する姿勢が目立つ。国内外の「メディア支配」への厳しい批判にさらされた同首相の逆襲が始まった。 五月二十八日、イタリアの首都ローマ近郊にある空軍基地「プラティカ・ディ・マーレ」で開かれたNATO・ロシア首脳会議。「ローマ宣言」調印式に臨んだ米国のブッシュ大統領とロシアのプーチン大統領はがっちりと握手を交わした。ホスト役を務めたイタリアのベルルスコーニ首相は、両大統領の間に立って満面の笑みを浮かべた。「かつての敵は今やパートナーだ」(ブッシュ大統領)、「欧州から切り離したロシアは考えられない」(プーチン大統領)――。第二次世界大戦後、世界を東西陣営に分断し、鋭く対峙してきた両大国のリーダーは、国際テロなど「共通の敵」に協力して対処する新たな協調関係を宣言した。ロシアのNATO準加盟が確定した今回の調印式は、互いを軍事的脅威と見なした冷戦構造に名実ともに幕を下ろす歴史的な節目となった。

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