前門の野党、後門の橋本派

執筆者:2002年7月号

 FIFAワールドカップ(W杯)日韓共催大会が開幕した五月三十一日、小泉純一郎首相はソウルに飛び、W杯競技場で開かれた開会式に出席した。「私は日本国民を代表し、韓国の金大中大統領とともに、全世界の皆さんを心より歓迎します。(中略)一カ月後に横浜の決勝戦でお会いしましょう」 一分足らずの短いあいさつを終えると、首相は大統領の席に歩み寄り、握手を求めた。大観衆から拍手と鳴り物の音が沸き起こる。握り合った手を高く掲げて、両首脳は競技場の歓声に応えた。 隣国でありながら、あるいは隣国であるがゆえに、ぎくしゃくした関係を続けてきた日韓両国。開会式での両首脳の握手は、日韓新時代の到来を内外にアピールする歴史的なツーショットとなった。求心力の低下に打つ手なし しかし、二人の首脳の笑顔にはどこかぎこちなさが漂っていた。 歴史教科書問題や首相の靖国神社参拝問題など、両国関係を再び悪化させかねない懸案が横たわっていることがその一因だった。首相のソウル訪問に合わせた首脳会談開催が見送られたのも、会談を行なえば「友好ムードに水をさすことを大統領から言わなければならない」(日本の外務省幹部)からにほかならなかった。もっとも、両首脳がお祭り気分に浸れない理由はそれだけではなかった。

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