さらに激化するのは確実となった「会計基準」をめぐる米欧間のスタンダード争い。採用方針が定まらず国内は分裂状態の日本だが、両陣営の対立を正すための責任は重い。 米国コネティカット州ノーウォークのオフィス街「メリット7」と、英国ロンドンのセントポール寺院にほど近い「キャノン・ストリート三十番地」。米英二つの街の間で会計戦争が起きている。「メリット7」は米国の会計基準を設定する民間組織、米財務会計基準審議会(FASB)の本部所在地。「キャノン・ストリート三十番地」には会計基準の世界的な統合を目指す国際機関、国際会計基準理事会(IASB)が本部を構える。お金の流れを大きく左右する会計というインフラ作りを担う世界の二大陣営は、お互いに一歩も引かない。「そろそろ諦めて我々のスタンダードを受け入れたらどうか」。こんな電子メールが大西洋を挟み、月に百通近くも行き交うのだという。最近の争点は「ストックオプション(自社株購入権)の費用化」だ。役員や従業員があらかじめ決められた価格で自社株を購入して利益を得るストックオプションは、会社側から見れば労働の対価として支払う人件費の性格を持つ。ストックオプションの価値が損益計算書に計上されていないのは、利益の不当水増しにつながるのではないか。こう考えたIASBはオプション価値を人件費に計上させる会計基準を導入する方針を固めたのだが、米国側はそれが気に入らない。

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